子ども達が口々に
「嘘つきババァの所!」と言っている。
おじさんはアパートの管理人だが、向いの
ババァの家へ何時も入って行く。
男の子や女の子がコソコソ集まってきて
コソコソ小声で
「不倫ババァのとこ!」と言った。
あやしい振動音と共に
子ども達が眉にしわを寄せて両手の指を
耳穴に入れて耳栓している。
子ども達に近づいて「何しているの?」と訊ねた。
「ババァの叫び声が煩いので耳栓してるの。
管理人のおじさんが来ると何時も聞えて来るので
叫び声が聞こえたぁ~って言ったら
犬の鳴き声だってあの家のおばさんがそう言うの。
だから嘘つきババァって皆で名前つけてるんだぁ~。」
「へぇ~ そうなんだぁ~」
「あなた達は何歳なの?」
「僕は小学2年!リカちゃんは小学1年! 三太は保育園」
「でもねリカ、ママがあのおばさんの事話してたもん!!
間違えたんだって。」
「まちがえた?!」
「うん、日を間違えたんだって・・・。
日を間違えて生まれたんだって・・・。」
「なんなのそれぇ~」
「アヤト君男の子だから男の子は関係ないみたい。
女の子の日って言ってた」
「へぇ~~」
「大人の事情でママがサイコンって言ってた」
「え? サイコロ?」
「サイコン!」
「でもあの叫び声嘘つきババァの声だと思うよ。
犬じゃないよねぇ~」
平日の日中に子ども達がまるで探偵の様な
会話をしていて驚いたが
ポケットから取り出した手にはチュッパチャップスの
キャンデーとチロルチョコを皆に配り、両手に握りしめて
悦に浸っていた。